ラージヒル

エッセイ

太陽だってまだ上昇中

先日、朝からスーパーマーケットで食材・酒を購入し、帰宅。
キッチンにて、以下の3品を拵えた。

1.豆苗炒め(ごま油、塩コショウ、にんにく、醤油)
2.タコのピリ辛(刺身用のタコに、食べるラー油をかけ、大葉を乗せて完成)
3.ブロッコリーの素揚げ(油温180℃、50秒で揚げて塩を振って完成)

テーブルに3品を並べた僕は、缶ビールをグラスに注いだ。
「ち、ちょっと早いけど、乾杯」
時刻は11時11分。
ゾロ目を見られたので、僕の気分は高揚した。

「美味し!!!」
豆苗がこんなにビールに合うとは思いもしなかった。
タコも食べるラー油が食欲をそそり、大葉のアクセントがgoodだ!
ブロッコリーの素揚げも、房の部分がお菓子みたいな食感でたまらない。
この3品はヘルシーかつ栄養価も高い。

あっという間に缶ビール5缶を飲み干した。
もう止まらない。止まれない。
僕は、熱燗にスイッチした。
アテは焼きたらこだ。
おちょこを呷った僕は、ふと思った。
「俺はすでに酒飲み爺なのか………」

 

 

時刻は13時30分。
いい感じに酔ったし、お腹もある程度満たされた。
しかし、〆の何かは食べたい。
「そうだ、蕎麦を食べに行こう」
僕は京都に行こう的な感じで玄関を出た。

早歩きでお蕎麦屋さんに向かった。
わずかだけど、自分の体が左右に揺曳している気がする。

13時55分、お蕎麦屋さんに到着した。
何とかランチタイムに間に合った。
しかもテラス席で、後ろは藪で覆われ崖になっている。

15分後、注文した2種類の蕎麦+天ぷらセットがこちらです。

 

蕎麦は北海道産と長野産。
また揚げ物を食べるのかと一瞬迷ったけど、いいじゃん。
素人の素揚げより何倍も美味しいのだから。

僕が薬味の皿を持ったその時、置物のフクロウと目が合った。
すると、一気に酔いが回ってきた。
「目がまわる………」
僕の視界がぶれ始めた。
フクロウが2匹に見える。
僕は深呼吸をした。
何も起こらなかった。


 

「ラストオーダーになりますけど、よろしかったでしょうか?」
店員の女性が言った。
「大丈夫です」
僕は瞬時に返答した。
よろしかったでしょうか? について、僕はスルーした。

ってか、僕はそれどころではないのだ。
視界が揺れていて、気持ちが悪いのだ。
「ラージヒルか………」
僕の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。
ラージヒルを飛んでいる選手のような、あの角度で今にも僕の口から飛び出しそうなのである。

「ようこそ。うちの蕎麦はどうっすかぁ?」
斜め前に男性が立っていた。
きっとこの男性は店長で、腕自慢の感想を聞きに来たのであろう。
「美味しくいただいてます」
「本当けェ?」
「本当です」
僕は店長に親指を立てた。
「客もいねえからよォ、ゆっくりやってくれ」
店長が遠ざかって行った。

もうダメだ。
僕はテーブルに両手をついてから立ち上がった。
僕は藪に向かってダッシュした。
歪んでいる視界。
体の揺曳がとまらない。
右足のスニーカーが脱げた。
「うわっ」
僕は急ブレーキをかけた。
いつの間にか藪を抜け、僕は崖の上に立っていた。

舞台は整った。
僕は前傾姿勢になった。
そして僕は、ラージヒルした。

それはK点を超える大ジャンプだった。

 

「了」



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