実家の野良猫と親父②

エッセイ

半年ぶりの実家へ

秋の風に誘われてやってきた実家。
早くこの家を出て自由に暮らしたい。
二度とこんな家に帰ってくるかと思っていた、10代の頃が懐かしい。
駐車場に車を停めると、さっそく庭で野良猫を発見した。

 

オヤジのパジャマとバケツと野良猫………。
手前の野良猫は初めまして、奥の野良猫はご無沙汰だ。

 



 

玄関を開けると、親父が椅子に座ってテレビを見ていた。
僕に一瞥をくれた親父は、「おうッ」と言った。
顔色が良くて、とりあえず一安心した。
が、お腹がでっぱった気がする。
どうやら親父は卓球の世界大会に夢中で、僕の事など眼中に無いようだ。

僕は玄関を開けた。
案の定、野良猫が近寄ってきた。

 

「こんにちは」
僕の呼びかけに、二匹とも「にゃぁぁ」と答えてくれた。

 



 

僕がもふろうとすると、すぐ近くでカラスが大声で鳴いた。
二匹とも何事かとカラスに視線を向けた。
その後もしばらく、カラスが鳴いていた。

 

手前の野良猫がずっと僕を見つめてくる。
それもお座りがちゃんとしていて可愛い。
だけどもふろうとするも、触れる直前で逃げられてしまう。

僕は玄関を開けると、キャットフードを手に取った。
「さっき食べたばっかりだォ」
親父の小言が聞こえた。
親父はさっきよりも前のめりになってテレビを見ている。
「少しだけいいだろ?」
僕の問いかけに、親父がこう言った。
「猫に聞いてみろ」
オヤジがにやけた。
ってか、どういう意味だろう。

 

 

親父の言う通りだった。
僕がキャットフードをあげても、
二匹の野良猫はほとんど食べなかった。
僕の完敗だった。

結局、親父は一度も庭に出てこなかった。
息子より、卓球の世界大会を選んだ親父。
まあ親子なんてこんなもんだろう。
半年前のように、もっと野良猫と戯れたかった。
仕方がない。また来よう。
なにより、親父が元気でよかった。

 

宝くじゲット

 

実家を後にした僕は、ラーメン屋さんに寄った。

 

味噌チャーシュー大盛り(1200円)を喰らった。
どこかやけ食いをしている自分が情けない。
うくくっ………。

 

【了】

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