想い出は突然よみがえる

エッセイ

YouTubeを見ていたら………

22時を過ぎた。
明日も仕事だし、そろそろ寝よう。
僕はレモンサワーを飲み干した。
触れていたマウスが床に落下した。

僕はマウスを拾って、YouTube画面を閉じようとした。
だけど次の瞬間、僕の目はパソコンの画面にくぎ付けになった。
「マジか………」
僕はそのまま動画を見続けた。

 

6年前に出会った女性

当時、作家を志していた僕は、千葉から軽井沢へ移り住んだ。
無職の僕は住環境を変えてでも、作家を生業としたかったのだ。
昔の軽井沢と言えば、川端ちゃん、芥川君、遠藤周君など、
たくさんの文豪たちが住んでいた。
つまり文学は、軽井沢から広まったのである。

しかし、僕の夢は叶わなかった。
いまでもこうしてキーボードをパチパチ叩いているは、
間違いなく未練が残っているからに他ならない。

僕はこのまま千葉に帰っても、また流浪の日々になるのが直感で分かった。
だから僕は軽井沢の地で就職を決めた。

そこで出会った女性に、僕は一目ぼれをした。
彼女は明るくて笑顔がとても素敵で、容姿端麗。
まさに高嶺の花だ。
5歳下で、僕よりわずかに身長が高い。

僕は根暗のヘタレで、不器用ついでに頓馬。
おまけに僕はメタボになりつつあったのだ。

過ぎていく日々に、夕日が沈む度に、僕は焦りを感じた。
このままで終われない。

 



 

僕は勇気を振り絞り、彼女を食事に誘った。
それもEメールでw
とても面と向かって言うのは無理www
だって僕は根暗のヘタレで、不器用ついでに頓馬なのだから。
それに緊張した僕を見た彼女は、間違いなく逃走していただろう。

お店はワインが美味しい洋食屋さんに決めた。
当時の夜、僕はマイカーで彼女を迎えに行った。
街路灯のそばに立っている彼女を発見。
白のロングコートにブーツ姿だ。
夜の帳が下りた10月の軽井沢の気温は、1桁しかない。
助手席のドアが開いた。
僕の鼓動が早くなる………。

夜風はちゃんと彼女の匂いを纏っていた。
「こんばんは。寒かったですか?」
「大丈夫です。行きましょう」
彼女の微笑みを見た僕は、心の底が熱くなった。
恋をするって、きっとこういう事なのだろう。

何の料理を食べたのかは全く覚えていないwww
だけど彼女の趣味や、やりたいこと等が分かっただけで充分。
彼氏がいないことも確認できた。
一番関心したのは、彼女がずっとニコニコしていることだ。
表情筋など疲れないのだろうかと心配になる。
だけど何度も彼女の笑顔に吸い込まれそうになった。

お代はもちろんお誘いした僕が支払った。
1日ただ働きしたと思えば、なんの問題もない。

 



 

年明けの軽井沢でダブルの虹を見る

それから急激に彼女との距離が縮まったかというと、
逆に開いてしまった。

なぜかって?
だから僕は根暗のヘタレで、不器用ついでに頓馬だからだ。
それにこの頃にはもう僕はメタボになっていたはず。

つまり、彼女が職場内で誰かと会話をしているだけで、
僕は仕事が手につかなくなる。
動揺・揺曳してしまうのだ。
これが嫉妬なのか何なのか、僕には一生分からないだろう。

しかし僕は諦めなかった。
僕はもう一度、彼女を食事に誘ったのである。
彼女は快く応じてくれた。
2戦2勝じゃないですかあ。
ハハッ☆彡

今度は和洋中のレストランでディナー!
この日は仕事の都合で現地集合。

今回も何の料理を食べたのかは全く覚えていないwww
だけど3時間も一緒に過ごす事ができた。
それも今回は素面ですからね?
お酒の力は借りていませんからね?
何の自慢なんwww

「ごちそうさまでした。私が支払います」
店員に対し丁寧な言動で接する彼女を、僕は隣で見守っている。
彼女の笑顔ではなく、彼女の他人に対する言動をずっと見ていたと思った。

2人で駐車場まで歩いている。
「て…テェ………」
「どうしたの?」
彼女が珍しくこちらを凝視している。
僕は彼女の手を握りたかったのだけど、言葉が出てこなかったのだ。
なぜかって?
だから僕は根暗のヘタレで、不器用ついでに頓馬&メタボだからだ。

クスッと笑った彼女は、僕の右手を握ってくれた。
これって、まさかの以心伝心?
それともテレパーシが通じたのか?

「またいつの日か会いましょう」
彼女が笑った。
彼女の満面の笑顔を、僕は確かに脳裏に焼き付けた。
強く握り返された彼女の手のぬくもりも、きっと忘れない。

彼女を見送った僕は、夜空を見た。
自分の吐息が夜空に霧消していく。
満月が僕に微笑んだ気がした。

 


2ヶ月後、僕は仕事を退職した。
そして沖縄に住むことになった。
もちろん、沖縄で就職も決めた。

僕は沖縄に行くことを彼女には伝えなかった。
だって僕以上に、彼女は海や沖縄が大好きなのだから。

今の環境をリセットし、新たな環境で働く為には、
引っ越すのが1番だ。
それにもし縁があるのであれば、またどこかで必ず会える。
そんな低い可能性を信じて、僕は沖縄へと旅立った。

彼女に告白をしたのかって?
するわけないじゃん!!!
なぜかって?
だから僕は根暗のヘタレで、不器用ついでに頓馬&メタボだからだ。

それに身の丈を知ることも、人生には必要なのだ。

 

ゼクシィ内祝い

 

時は流れて2022年の年末。
彼女の変わらない姿と仕事に対する熱意を見た僕は、
目頭が熱くなった。
なぜか僕も頑張らなくてはと、気分が高揚している。
それは数年ぶりに見た、彼女の満面の笑みのせいだろう。

世界中の不機嫌な人たちを、おそらく一瞬で笑顔にしてしまう、
あの彼女の笑顔は、僕の財産だ。

目頭が熱いままの状態で、僕はエッセイを書き始めた。

最後に、虹は卒業を意味する。
年明けに見たダブルの虹は、
軽井沢からの旅立ちを教えてくれたのだろう………。

 

【了】

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