人生…どっちに転んでも一緒

エッセイ

8月、37℃の炎天下

また職探しか………。
ハローワークに到着した。
車を降りると、熱波が襲ってきた。
人の体温を超える暑さ。
もはや正気の沙汰ではない。

何度目の転職になるのか、もはや思い出せない。

室内は求職者で溢れていた。

飽食の時代だからこそ、仕事も多岐にわたり選びたい放題。
逆に選択肢が多すぎて迷うのも事実。

40代でさえ、若手と言われる時代。

それと2025年問題。
そう、人口の一番多い団塊世代が、後期高齢者(75歳)を迎えるのだ。
老人ホームも圧倒的に不足している。

この先、日本はどうなってしまうのだろうか。





 

職業相談

僕の順番が来た。

白髪のメガネ男性が僕の担当だ。
僕の意見を聞きながら、男性がパソコンに打ち込んでいく。
これで給料をもらえるのなら、良い仕事かも知れない。

僕は気づいてしまった。
男性の右の鼻穴から、一本の鼻毛が出ている事に………。
なんで?

以降、鼻毛が気になって男性の話が僕の頭に入ってこなくなった。

冷房のスイングによってそよぐ鼻毛。

面白過ぎる…。
今日は大安か?

きっとマスクをしていた頃は大丈夫だった、鼻毛と髭。
この仕事で鼻毛はアウトだろう。

こんな鼻毛が出ている男性に、僕は仕事の相談をしていて良いのだろうか?

答えはノーだ。

「承知いたしました」

僕はメールの返信のような言葉を発すると、席を立った。
あっけにとられている鼻毛男性。

こんな鼻毛男性に、僕の何が分かるというのか。
相談?
冗談じゃない。
そこまで僕は落ちぶれてはいない。

僕は車のエンジンをかけた。
一瞬にして汗が噴き出してきた。

「行きますか」

僕は独り言を発すると、高速道路に乗った。

何かに躓いた時は、旅に出るのが一番。

自分の人生だ。

自分で選択した道に、正解も不正解もない。

だって、人生どっちに転んでも一緒なのだから。

だったら、たくさん後悔しようゼ!

夕日に導かれながら、僕は生きているという実感を得た。

これで十分だ!

 

【了】



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